お知らせ・ブログ・症例
Blog
- 渋谷の歯医者「渋谷マロン歯科Tokyo」TOP
- お知らせ・ブログ・症例
- ブログ
- MTAセメントとは?歯の神経を残す治療法としての可能性
2025.03.23
MTAセメントとは?歯の神経を残す治療法としての可能性

こんにちは、渋谷マロン歯科Tokyoです。近年、歯科医療の技術は目覚ましく進化しており、従来は困難だった治療法も可能になってきています。特に歯の神経を残す治療は、多くの患者様にとって大きな関心事となっています。
今回のブログでは、歯の神経を残す重要性や歯髄保存療法(VPT)、MTAセメントのメリット・デメリットについて詳しく解説します。
歯の神経を残すことが大切な理由
虫歯が進行して歯の神経(歯髄)に達した場合、従来は「神経を抜く」という処置が一般的でした。しかし、近年の歯科医療では、可能な限り歯の神経を保存する「歯髄保存療法(VPT)」が注目されています。
歯の神経を残す理由は、痛みの感知だけでなく重要な役割があるからです。歯髄には血管やリンパ管も含まれ、主に次の2つの働きがあります。
•噛む感覚や温度を脳に伝える機能
•異常を察知して免疫細胞を活性化させ、虫歯から防御する機能
神経を残す治療が全ての症例で可能というわけではありませんが、適応できる場合は歯の寿命を延ばせる可能性があります。歯科医師としっかり相談しながら、状況に応じた最適な治療法を選ぶことが大切です。
歯髄保存療法(VPT)とは
歯髄保存療法(VPT)とは、虫歯や外傷があっても、できる限り歯の神経を残して治療する方法です。
以前は歯髄(歯の神経)が一度露出してしまうと保存が難しいとされていました。しかし、バイオセラミックセメントの一種である「MTAセメント」の開発により、従来は神経を抜くしか方法がなかったケースでも神経を残せる可能性が広がりました。
歯髄保存療法(VPT)の4つの方法
歯髄保存療法(VPT)には、虫歯の進行度合いや神経の状態に応じて選択できる4つの治療法があります。神経に近い部分を保護する間接覆髄法から、一部の神経だけを残す断髄法まで、それぞれの方法は患者様の症状に合わせて最適な治療効果を発揮します。それぞれどのような方法なのか詳しくみてみましょう。
間接覆髄法
歯の神経の近くまで進行した虫歯を治療する際、神経に近いところまで処置した後に神経が露出していない場合でもMTAセメントを用いて神経を保護します。
直接覆髄法
虫歯治療中に神経が露出してしまった場合に、MTAセメントを直接塗布して神経を保護します。神経自体に問題がないときに効果的です。
部分断髄法
神経の一部に問題がある場合、悪い部分だけを取り除き、健康な部分は残します。神経を残す治療の中で最もよく行われる方法です。
全部断髄法
歯の周囲にある粘膜よりも上の部分の神経は取り除きますが、根の部分の健康な神経のみを残す方法です。
どの方法を選択するかは、虫歯の進行状態や炎症の程度によって変わります。早期発見・早期治療が、神経を残せる可能性を高めるので、定期的な歯科検診を受けることが大切です。
MTAセメントとは
MTAセメント(Mineral Trioxide Aggregate)は、1993年に米国ロマリンダ大学の研究者によって開発された特殊なセメント材料です。主に酸化鉄、酸化ケイ素、酸化カルシウムなどから構成されており、1998年から欧米で使用され始め、2007年に日本でも導入されました。現在では多くの歯科医療で使用されています。
MTAセメントの特徴とメリット5つ
MTAセメントは歯科治療の画期的な材料として、患者様の歯を守るために様々な優れた特性を持っています。特徴とメリットについてそれぞれ詳しく解説します。
体に調和する高い生体親和性
MTAセメントは細胞培養も可能なほど身体との調和性に優れています。骨や歯に似た成分を持つため、歯の穴や根の先端部など、直接体内に触れる部位にも安心して使用できます。
完璧な密閉性で細菌の侵入を防止
通常のセメントは時間とともに収縮して隙間ができますが、MTAセメントは固まると膨張するため、歯髄に近い部分を完全に密閉できます。優れた封鎖性により細菌の侵入を防げます。
強力な殺菌作用で残存細菌を除去
強アルカリ性のMTAセメントは、優れた殺菌効果を持ちます。根管治療でどんなに丁寧に洗浄しても残る細菌を死滅させるため、再感染を防ぎ、歯を長持ちさせます。
硬組織形成を促進して歯を強化
MTAセメントは徐々に水酸化カルシウムを放出し、歯や骨の再生を促します。この「硬組織形成作用」によって失われた組織が再生され、歯が割れたり、折れたりするリスクも減少。歯の寿命を大幅に延ばせることが期待できます。
湿った環境でも効果を発揮
歯科治療では完全な乾燥状態を作るのが難しいものです。MTAセメントは親水性に優れ、血液や浸出液が残る環境でも十分な効果を発揮します。
渋谷マロン歯科Tokyoの実際の治療例
症例1:痛みのなかった大きな虫歯に対する歯髄保存療法(VPT)
患者様は特に痛みを感じていませんでしたが、歯科検診で大きな虫歯が見つかりました。通常であれば抜髄(神経を抜く)となる状態でしたが、虫歯の除去後、条件が整っていたため、歯髄保存療法(VPT)を実施。治療後も痛みはなく、良好な経過を辿っています。
治療概要
治療内容 | 歯髄保存療法(VPT) |
期間 | 1ヶ月 |
治療回数 | 4回 |
費用 | VPT 44,000円(税込) 土台 27,500円(税込) 被せもの 137,500円(税込) |
主な副作用・リスク
•治療後、疼痛が出る可能性があります
•強い自発痛が発現した場合は抜髄処置となります
•神経が残せることが確約されている処置ではありません
•数年した後に神経が失活する可能性もあります
•自由診療となります
症例2:神経近くまで到達した虫歯に対する歯髄(歯の神経)の保存
患者様の虫歯はかなり大きく穴が空いてしまっている状態で、痛みはありませんでしたが、物が挟まったりしみたりするとのことでした。治療後は、特にしみたりすることもなく仮歯の置き換えを完了できました。
治療概要
治療内容 | 歯髄保存療法(VPT) |
期間 | 1回 |
治療回数 | 1回 |
費用 | 44,000円(税込) |
主な副作用・リスク
•治療後疼痛が発生する可能性があります
•強い自発痛がある場合は抜髄処置となります
•神経が残せることが確約されている処置ではありません
•自由診療となります
歯の神経を残して治療をするメリットと注意点
歯の神経を残して治療するメリット
•歯を長持ちさせることができる
•自然な歯の感覚が残る
•将来の治療費を抑えられる
歯の神経を残すことで、歯の寿命を延ばし、自然な感覚を保ちながら快適に過ごせます。また、神経のある歯は内側から栄養を受け取り続けるため、長期的に見て歯の健康維持と医療費の節約につながります。
歯の神経を残す治療の注意点
•治療費が通常より高くなる場合がある(保険適用外のことも)
•症状によっては適用できないケースもある
•高度な専門技術が必要な治療である
•治療したあとに歯がしみる可能性がある
神経を残す治療はすべての方に適用できるわけではなく、虫歯の進行度合いや症状によって選択肢が変わります。専門的な技術と経験を持つ歯科医師による診断が重要ですので、しっかりと相談することをおすすめします。
歯の神経を守る治療で健康な歯を長く維持しましょう
歯の神経を残すことは、歯の健康を長期的に維持するために非常に重要です。MTAセメントを活用した歯髄保存療法(VPT)により、従来は神経を抜くしかなかった症例でも神経を残せるケースが増えてきています。
ただし、この治療は症例によって適用できるかどうかが異なり、虫歯を除去して初めて適応可能かどうかわかることも多いです。歯髄保存療法(VPT)の実績がある歯科医院を選び、専門医の判断を尊重しましょう。また、早期発見・早期治療が成功の鍵となりますので、定期的な歯科検診も大切です。
当院では、歯髄保存療法(VPT)についてもしっかりと診査を行い、メリットデメリットもお伝えした上で治療を開始しています。虫歯治療について不安がある方は、お気軽に渋谷マロン歯科Tokyoへご相談ください。
こちらのページもご覧ください。
根管治療(顕微鏡歯科)|渋谷マロン歯科Tokyo
【症例】MTAセメントによる側枝および歯根吸収を有する歯の根尖性歯周炎の治療
監修者情報
