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2023.10.17
糖尿病専門医からみた歯科との連携の重要性_日本糖尿病学会専門医・指導医 中島健一
歯周病と糖尿病の間には関連があることをご存知でしょうか。今回は、糖尿病治療における歯科との連携の重要性について、糖尿病専門医の立場からお話します。
糖尿病とは
糖尿病は、インスリンというホルモンの作用不足が原因で、高血糖が慢性的に続く病気です。
高血糖になると尿から糖が検出されるのでそのように呼ばれていますが、診断は尿中の糖ではなく、血糖値やHbA1cなどの血液検査の数値、75gOGTTと呼ばれる負荷試験などによって行われます。
糖尿病は、妊婦さんなど一部の場合を除き、主に1型糖尿病と2型糖尿病に分けられます。
1型糖尿病は、何らかの理由(多くは自己免疫機序)により膵β細胞(体内でインスリンを分泌する唯一の細胞)が破壊され、インスリン分泌ができなくなって発症します。
一方で、2型糖尿病は、遺伝的な要因のほかに、過食や運動不足などの生活習慣、その結果としての肥満が環境因子として加わり、それらが組み合わさって発症します。
2型糖尿病は最もありふれたタイプの糖尿病で、厚生労働省の国民健康・栄養調査(※)によると糖尿病もしくはその可能性を否定できない人は約2000万人にものぼっています。
糖尿病の恐ろしさは、自覚症状のない間に重篤な合併症が進展することです。慢性の合併症として、小さな血管の障害である神経障害・網膜症・腎症の三大合併症のほか、より大きな血管の障害である壊死・脳血管障害(脳梗塞や脳出血)・虚血性心疾患(狭心症や心筋梗塞)のリスクも高まります。さらに、認知症や癌・歯周病なども糖尿病と関連するといわれています。
糖尿病には3つの予防があります。
・境界型(いわゆる糖尿病予備軍)と呼ばれる、糖尿病を発症する手前の段階で防ぐ1次予防
・たとえ糖尿病を発症しても良好な血糖コントロールを行って合併症を発症させない2次予防
・糖尿病の合併症を発症してしまっても、合併症の悪化・進展・別の糖尿病合併症の発症を食い止めるための3次予防
糖尿病やその合併症の予防には、こられがどれも重要です。
糖尿病と歯周病の関係
近年、糖尿病と歯周病は密接に関係しており、糖尿病の人は歯周病になりやすく、歯周病になると血糖コントロールが悪くなることもわかってきました。糖尿病と歯周病は相互に関係し、悪循環に陥ってしまいます。
そもそも歯周病は、歯や歯と歯茎の間の歯周ポケットにおける細菌感染症です。その細菌の塊をプラーク(歯垢)とよび、歯肉に炎症を引き起こします。炎症がひどくなると、歯茎が腫れたり、出血したりします。最終的には歯が抜け落ちてしまいます。
糖尿病の高血糖があると、
・脱水が引き起こされ、唾液の分泌が減るので、口の中の浄化作用が低下してしまいます。
・白血球の働きが低下し、感染症である歯周病になりやすくなってしまいます。
・高血糖によって血流が障害され、歯周組織の修復が妨げられてしまいます。
・糖尿病ではインスリンの作用が弱まっており、筋肉や臓器などには栄養が届きにくい状況となっています。そうした変化の影響で、歯周組織内のコラーゲンの減少や変化が起こり、修復力も弱くなります。
このような理由で、糖尿病の方は歯周病になりやすく、実際に、糖尿病患者さんは歯周病の発症頻度が約1.5~2.0倍程度になると言われています。さらに糖尿病患者さんは、歯周病が悪化しやすいことが多くの研究で報告されています。
ただ、歯周病の発症や悪化については、上記のように高血糖が原因と考えられており、これらの研究でも、HbA1c7.0%以下の良好なコントロールをしている患者さんでは、糖尿病の影響はなくなるということもわかっています。
また、血糖コントロールがうまくいっていない患者さんは、感染に対して弱くなったり、傷の治りが悪くなったりして、歯周病の治療効果に悪影響を及ぼす可能性があります。そのため、できれば歯周病治療の前に糖尿病のコントロール状態を改善することが望ましいです。
糖尿病専門医からみた歯科との連携の重要性
上記のように糖尿病と歯周病は密接に関係しておりますが、わかっているのは悪いことばかりではありません。
最新の研究では、歯周病の治療を行うと、糖尿病が改善することがわかっています。したがって、糖尿病をお持ちの方は、歯周病の予防が大切です。歯周病の予防には、毎日の歯磨きが有効なのはいうまでもありませんが、さらに定期的に歯科を受診し、歯石除去などの専門的な処置をしてもらうことが重要です。また、歯石除去をしてもらったあとに、歯石付着の予防としてPMTC(Professional Mechanical Tooth Cleaning)をしてもらうことも効果的です。
このように糖尿病と歯科の連携は重要ですが、残念ながらあまりうまく機能していのが現状です。
例えば、日本糖尿病協会発行の糖尿病手帳には歯科受診の記録も記載できるようになっておりますので、主治医に任せきりにするのではなく、患者さんご自身がこういったツールを活用して、糖尿病と歯科との間での連携を取ってもらうことも重要です。
渋谷マロン歯科Tokyoで可能な予防処置
糖尿病の治療では、歯科との連携が重要であることをおわかりいただけたでしょうか。
糖尿病のコントロールには、歯科的治療・予防もとても大切です。歯周病のある方はその治療が必要ですが、今はお口の症状がないという方もクリーニングにお越しいただくことをお勧めします。
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